|
レグルスは、その事実を知って愕然とした。
この日ほど医学を学んできた事を、憎んだ事はなく…。
そして。
安堵した事は無かった。
「……何故…?」
目の前に座るロキは何も答えず、ただ俯いていた。
「…ロキ…」
「………」
しゃがみこんで、視線を合わせる。
「…教えてくれ…何故、だ?」
ふるふると、ロキが首を振った。
「ロキ…アルに、どう告げるつもりだ…?」
はっと、ロキが顔を上げる。
「兄様には言わないでっ!!」
その顔は、必至で…今にも泣きそうだった。
縋りつくように、レグルスの肩を掴む。
「お願いだから、兄様だけには…!兄様だけには言わないでっ!!」
「…ロキ?」
ロキが必死になるのもわかる。
けれど…。
何かがおかしい。
何故、ロキはこうなった?
アルファズルの至玉とまで言われ、尚且つあのアルダフェズルの手中の珠が…。
何故?
「無理だ…必ず知られる…。アルは…許さない…」
レグルスは首を緩く横に振った。
許すはずが無いだろう…?
あの、アルダフェズルが……。
「……言わないで…」
ロキが呟いた。
それは。
とても小さく、そして…
レグルスは息を飲む。
今までのこの子からは考えつかないほどに鋭く強い。
「…言ったら…レグルス…俺はアンタを憎む」
銀の瞳が真紅に輝いて、彼の本気をうかがわせた。
「…けれど…」
絶対に、知られる。
秘密にし通す事など無理なのだ。
何故…?
何故、この子は…
レグルスは、はっと顔を上げた。
兄に知られたくない理由…それは、アルダフェズルがロキを縛り付けているから。
けれど…この子がここまで本気になった。
それは…どう言う事だ?
あの、アルダフェズルの手中にあるこの子に…。
あんな事ができるはずが無いのだ。
違う!
ひとりだけ、存在する!
アルダフェズルが怖いから、ロキは発覚を恐れているのではない。
違うのだ。
違う…違うのだ。
今まで、レグルスが考えていた真相とは、別のところに真実はあったのだ。
「…ロキ…」
名を呼ぶ声が震える。
「その…その腹に宿った子はアルの子供なのか……!?」
ロキが真っ青になって、涙を零した。
|